
この記事ではカスタマーサクセスについて説明します。カスタマーサポートとの違いや、カスタマーサクセスと密接に関わるサブスクリプション(定期収益)について、買い切りモデルと比較しながら説明していきます。
全く新しいコンセプトの製品、これまで存在した製品問わず、サブスクリプション化が進んでいます。例えばTOYOTAは車のサブスクリプションを始めました。KINTOです。

他にも、、、
など、かなり多方面に渡りサブスクリプション化が進んでいます。成功例としてはAdobeが有名でしょう。
サマリー
なぜサブスクリプションなのか?
以前のAdobeはクリエイティブソフトを買い切り(ワンタイムペイメント)で提供していました。しかしこれをサブスクリプションに変更することで大きく事業は成長しました。

以前のAdobeは18〜24ヶ月のサイクルでソフトの新バージョンをリリースしていました。これはハードウェアのイノベーションサイクル(新しいCPUなど)に合わせていた形です。Adobeのソフトウェアは多機能ゆえ、ハードのリソースをフルに使いたいのでそういう形を取っていたのです。
しかし今では、CPUをはじめとする様々な部品のイノベーションサイクルが短くなっています。これまでの新バージョンサイクルについて考え直さないといけませんでした。
サブスクリプションでの提供を結論付けたのはハードウェアのイノベーションサイクルに合わせるためだけではありませんでした。短い期間での機能アップデートは顧客のニーズに応えるためです。
「Photoshop」と言えば、10万円前後のパッケージ品。でも今では月額3000円程度でそれが利用できるようになり、新しいユーザーの呼び水になりました。また、Adobeのソフトウェアは多機能ゆえに使用方法が複雑。それはサブスクリプションと親和性が高かったのです。理由は、サブスクリプションが売って終わりではなく、利活用までの成功を見届けるモデルだからです。
ここにサブスクリプションとワンタイムペイメントとの明確な差があります。サブスクリプションがなぜ優れているのか?
- 期初に売上予測が立ちやすい
- チャーン(解約)の理由と対処法、アップセル(追加購入)の成功要因と手法、などプロセスを管理しやすい
- それぞれの部署で管理すべき指標が明確なので、ボトルネックの把握が楽
- これまでは売った後にどうやって製品が使われているか知る由もなかった。しかしサブスクリプションでは知らなければいけないので、製品をどう改修すれば良いか、セールスやマーケティング、カスタマーサポートをどう改善すべきかの答えを知れる
ワンタイムペイメントは売って終わりで良かった。カスタマーサポートと言っても名ばかりなもんです。でもサブスクリプションではそうはいきません。顧客は解約という選択肢を自由に取れます。競合サービスに簡単に乗り換えられる以上、製品を使って、成功させるところまでコミットしないといけないのです。
サブスクリプションやワンタイムペイントなどのオファーについて詳細が知りたい方は以下のマーケティングオファー集が役に立つでしょう。興味がある方はダウンロードしてみてください。

マーケティングオファーの辞典
「こんなの今まで見たことない!!」
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サブスクリプションを上手くやることで、事業は成長し、安定しますが、これまでの買い切りと同じやり方では上手くいきません。そこでカスタマーサクセスとカスタマーサポートの出番なんです。
カスタマーサクセスとは何か?
カスタマーサクセスという言葉を聞いたことがありますか?この言葉はSaaS系のITサービスに関わっている人にとっては比較的、馴染み深い言葉です。
直訳の通り、顧客を成功に導くチームを指します。厳密に言うと、チームだけでなく、顧客第一主義とする会社全体の方針という意味でも使います。
カスタマーサクセスは能動的に顧客の問題を解決することが仕事です。顧客の問題の把握や、顧客毎の製品の利用頻度、使い方など細かくデータ化します。様々なバリエーションの問題を適切に解決し、顧客を成功に導きます。
顧客が成功すると、サブスクリプションのリテンション(継続率)が高まり、チャーンレート(解約率)が低くなります。彼らの目標はまさにここです。
カスタマーサクセスの計測指標
彼らが上手く仕事をしているかどうかは、
- リテンション(継続)
- チャーン(解約)
- LTV(顧客生涯価値)※アップセルオファーによりオプション契約をどれだけ決められたか
により計測することが一般的です。この3つの指標は定点観測し、月毎に推移を追いかけます。ただし、これでは傾向の把握までに時間が掛かります。そこでカスタマーヘルススコアも管理します。このスコアはリテンションやチャーンの危機を早めに把握し、手を打てるようにします。
カスタマーヘルスの要素に決まりはありませんが、製品の利用頻度、問い合わせ件数、支払い状況、などの要素を使いスコアリングします。このスコアは閾値で考え、〇点未満はチャーンの危険があるので、メールでフォローアップしたり、対策を打ちます。
3種類の接触レベル
カスタマーサクセスの接触レベルには製品種別やビジネスモデルによって3つに分類されます。
- ハイタッチ
- ロータッチ
- テックタッチ
ハイタッチとはBtoBの製品で月額費用が高く、1件のチャーンが収益に大きく影響する場合などに取られる接触方法です。人が介在して、問題を把握し、解決朔を提示します。顧客に寄り添う形で密にコミュニケーションを取ります。
ロータッチとは、効率化できる部分はツールを使って効率化し、状況によって(ハイタッチほどではないですが)人が介入して直接問題を解決します。
テックタッチとは、大部分をツールにより効率化する接触方法を指します。基本的な考え方は1対多で、ウェビナーやメール、チャットボットを多用します。
1つの製品でLTVにより、顧客単位で接触レベルを分けるケースもあります。その場合はカスタマーヘルスを使ってグループ分けし、効率よく接触していきます。
カスタマーサポートとは何か?
ではカスタマーサポートとカスタマーサクセスの違いは何でしょうか?カスタマーサポートはカスタマーサクセスと姿勢という点がはっきりと違います。
カスタマーサポートは受動的に顧客の問題を解決します。顧客に問題が起きた時に電話やチャット、問い合わせフォーム、メールなどで連絡を受けます。その問題に対して、わかりやすく、的確に短時間で解決策を返すことが仕事です。
カスタマーサクセスは顧客の問題が明らかになる前にソリューションを提案し、成功に導くことが仕事。カスタマーサポートは問題が起きた時に迅速に処理することが仕事。この2つには明確な差があります。
カスタマーサポートの計測指標
ではカスタマーサポートは何を持って評価されるべきなのでしょうか?
- 対応回数
- 返信時間
- NPS
対応回数や返信時間とだけあって、求められることは如何に効率的に短い時間でできる限り多くの顧客の問題を処理するか、それがカスタマーサポートに求められることです。その仕事振りを把握するためにNPS(Net Promoter Score)も見ていきます。
NPS(Net Promoter Score)とは?
NPS(ネットプロモータースコア)とは顧客が製品・サービスに満足しているかを図るシンプルで信憑性の高い指標です。以前から利用されていた顧客満足度調査とコンセプトは似ていますが、より科学的でシンプルになったものと思えばわかりやすいでしょう。
「この企業・製品・サービス・ブランドを友人や同僚に勧める可能性を教えてください」というシンプルな質問をします。回答者は0〜10までの11段階で回答し、回答結果を次の3グループに分けます。
- 批判者(0〜6)
- 中立者(7〜8)
- 推奨者(9〜10)
アンケートの総数から、グループの比率を求めます。そして次の計算方法でNPSが算出されます。
推奨者率 — 批判者率 = NPS
この指標はカスタマーサポートの品質を把握する上で役立ちます。改善するには”批判者”の不満に思っている点の掘り下げが必要ですが、先ずはNPSの定点観測です。SurveyMonkeyやTypeformといったアンケートツールを使って定期的にアンケートを取りましょう。
カスタマーサクセスとカスタマーサポートの立ち上げ方法について
サブスクリプションモデルの成功にカスタマーサクセスは欠かせません。ではいきなりカスタマーサクセスを立ち上げるべきなのでしょうか?それは現実的に難しいでしょう。
カスタマーサポートチームはすでに存在する。という企業は多いと思います。急ぎの問題をすぐに解決しないと顧客が離れてしまうので、そういう自然な形になっています。この流れに沿うべきということです。目先の問題を解決できないと事業は立ち居かなくなります。それに目先の問題は、、、
- 製品ロードマップの調整に役立つ
- マーケティングメッセージやコンテンツ制作に役立つ
- セールスプロセスの改善に役立つ
といった利点もあります。この目先の問題をクリアにした先にカスタマーサクセスがあります。
先ずはカスタマーサポートの仕組みをしっかり作ること。チャットボットやFAQページなどを上手く活用し、よく問い合わせを受ける質問は検索できるようにしましょう。カスタマーサポートに貯まる情報がカスタマーサクセス立ち上げだけでなく、事業の存続の素材になっていきます。
補足:テクノロジーやツール
カスタマーサクセスやカスタマーサポートに役立つツールをいくつか紹介します。
- 書籍:カスタマーサクセス――サブスクリプション時代に求められる「顧客の成功」10の原則
- カスタマーサポートチャットボット:KARAKURI
- インサイドセールスツール:bellFace
- チャットツール:Chatwork
- カスタマーサクセス管理ツール:Re:lation
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