
「何でもできます」ってのは「何もできない」と同じ意味だよ。
昔の上司はよく僕にそう言っていました。
あなたが頭が痛い場合、万能薬と頭痛専用薬が目の前にあったとして、どちらを選びますか?きっと後者なはずです。具体的なビジネスで考えていきましょう。
あなたは頭痛薬を売り出す製薬会社のマーケティング担当者。さてどうやって売り出しますか? ドラッグストアで販売する薬としてマーケティングプランを考えてみてください。
まずはこのチャートです。

これは頭痛薬カテゴリーの中で競合薬がどこに位置するかをマッピングしたもの。網羅はできていません。あなたがイメージできさえすればいいんで。実際にやる時はしっかり調査してください。どのカテゴリーだろうとググれば競合商品は大抵わかります。
話しを戻します。このチャートを使えば競合薬がいないフリースペースがわかります。、、、ですが、縦軸・横軸の要素をどう選ぶかによってマッピングが変わるので、一歩間違えると何ら機能しないチャートになります。
薬を例に出したことは今になって間違っていたと後悔しています。縦軸・横軸の要素は消費者の購買決定に影響する要素を選ばないといけないんですが、薬は欲求ではなく必要に迫られて買うので、この話しの題材としては不向きでした。
まあいいでしょう。さてチャートを見てください。縦軸を専用度合い、横軸を自然由来度(最初はブランド認知度としようとしたのですが、あまり購買に影響しないと判断しました)としておきましょう。専用度合いを弱くすれば対処療法となり汎用薬になります。逆に強めれば特化薬です。自然由来度は強くすれば漢方。弱くすれば医薬品です。で、これをベースに競合薬と現状の自社薬をマッピングします。市場の全体像と全体像から競合がどこにいて、自社はどこに位置しているかがわかります。ぽっかり穴の空いたフリースペースは比較的簡単に見つかります。じゃあそこにポジショニンすればいいのでしょうか?いいえ、そんな単純ではありません。
差別化とは?ニッチとは?
差別化とは今までにない新しいジャンルを作ることではありません。デカいビジネスカテゴリーからあなたなりの切り口を見出すことです。別名ポジショニング。システマチックに考えるなら存在するビジネスカテゴリーとあなたの切り口の積をイメージしてください。2つの円が交わる部分がポジショニング位置です。切り口というのは先ほど見てもらったチャートの縦軸・横軸にあたります。どう切ろうがあなたの勝手。でも不慣れな人は大抵間違いを起こします。人がいない場所を選び、差別化してると思い込んでしまいます。ターゲットとなる見込客の概算数や購買欲求度合いはチェックしておいた方がいいです。この2つをクリアできないなら、振り出しに戻ってやり直しです。
ポジションを絞って、顧客属性を具体化することをニッチと言います。過去の成功企業(トヨタやGE、IBM等の大手は別 )・起業家は例外なくニッチを見つけて成功しています。成功者はニッチの抽象度合いと自分達のビジネスレベルを合わせます。切り口を狭くすれば顧客属性は具体的になります。こうすると母数が少ないトレードオフはあるものの、マーケティングは楽。それに客単価(LTV)も上がります。切り口を広げれば顧客属性は抽象化します。 インプレッション重視の広告(CMやプログラマブルなバナー広告)を打つ必要が出てくるかもしれません。そうなるとツール側(DMP)で顧客属性を定義してグループ分けを行い、グループ毎にプロモーションを考えたりと、何かと大変です。要はマーケティング費用が嵩むってことです。
資本が少なく、キャッシュフローが安定していない状況では厳しい戦略になるんで、起業直後のフリーランスは多分しんどいです。 逆に起業直後はニッチを徹底的に絞るべきです。
鉄の塊があるとします。その塊はビジネス能力を反映しています。フリーランスは1cm角くらい。溶かせばどんな形にもなります。目の前には参入分野の壁があります。結構分厚そうな壁です。どうやってこの壁を壊しますか?
まずは鉄を火にかけて溶かします。次に成型です。ここがブレークスルーするか否かの分かれ目。仮にメリケンを作ったとします。それでヤスリのようにゴリゴリ壁を削ります。中々壁にダメージは与えきれていません。これでは壁の粉砕に時間が掛かりそうです。
成功者のやり方はこうです。
釘のように細く鋭い形に成形します。それを使って壁の1点をひたすら叩きます。すると穴が空きます。穴が空いた先に壁を頑丈にしている補強材を見つけました。今度は補強材を叩く方法を考えます。
わかりますかね?
リソースを1点に、1顧客属性のためだけに集中させてひたすらやることです。上手くいかなくても、メリケンを作るよりかは失敗に早く気付けます。1点突破したら、次に何をすべきかはそこで見えてきます。
話しが長くなったんですが、ニッチを上手くバランスさせることは重要ですが、最初の戦略としては絞るべきだということです。では具体的にどうやるか?次で説明します。
ニッチ戦略①狭い分野で一等賞になる
一番は覚えているけど、二番は覚えていない。これはよくあることです。2002年に日本で開催された日韓ワールドカップの優勝国がブラジルであることを覚えている人は多いと思います。では2位は?パッと出てこなくないですか?(因みにドイツ)
ビジネスでも同じです。業界1位と2位の間には結構な差があるものです。ビジネスで成功したいんであれば1位をとらなければいけません。どのようなレベルでもいいんです。絞り込んだ顧客属性に向けて1等賞になる必要があります。ちなみに業界内で複数社が拮抗している場合、そのビジネスカテゴリーは不安定で参入が楽だったりします。では資本にモノを言わせて、強引に業界一位を勝ち取ればいいんでしょうか?それは無理です。後からリーダーのポジションを獲得するのは金がいくらあっても足りません。
ニッチ戦略②初動はフルスロットル
スモールビジネスの経営者はニッチを見つけて戦うしかないです。ニッチを見つけたら駆け足でシステムを作り上げ、一番乗りする。そして一気にプロモーションを仕掛ける。もしも狙ったニッチの中で先客がいるなら、その座を奪うのは無理です。ニッチを見つけたら、そこで一等になるためにあらゆるリソースを集中すべきです。最初に一等になったもん勝ちですからね。
ニッチ戦略③エッセンシャル思考
フリーランスのように身一つでビジネスをする場合、特にコレは最重要です。例えば旅行比較サービスで起業したとします。キャッシュフローが徐々に安定してきたので、スケールを考えます。次の内どこに投資しますか?
- プライベートブランドを設立し、自社企画のツアーをローンチする
- 引っ越し比較サイトをリリースする
- 既存サービスの改修・ブラッシュアップ
優れたマーケターは大方「3」を選びます。徹底的に一つを掘り下げて、費用対効果の曲線が緩やかになるところまでは、その方法を徹底的にオタクのようにやり抜きます。もうこれ以上やっても意味がないとわかったところで、上下左右にリソースを展開させます。
仕事がデキる人ほど、色々なことを学び、色々なことに手を出し、中途半端に終わります。1点突破は起業家の成功に必要不可欠な考え方です。しかしコレ簡単ではないんですよね、、、。わかっていても中々できないものです。
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