
アメリカの本屋さんに並ぶ営業関連のビジネス書は日本のそれとは比べ物にならないほど質も量も高いです。米国の営業プロセスは日本の数年先を走っています。日本よりも合理的、効率的、科学的です。
この営業プロセスを取り入れようとしているB2B企業も少しづつ出てきています。そのプロセスをざっくり言うとこんな感じ。
- マーケティングがリード(見込み客)を掴む
- インサイドセールス(SR)がマーケティングから渡されたリードを育成する
- フィールドセールス(EBR)が個別にリードを見つけ、ある程度温める
- アカウントエグゼクティブ(AE)がインサイドセールスやフィールドセールスから渡された確度の高いリードにクロージングを仕掛ける
- アカウントエグゼクティブ、カスタマーサクセス(CS)、カスタマーサポートが顧客と頻繁にコミュニケーションを取り、アップセル、クロスセルを仕掛けて、LTVを上げる
必ずしも1から順番というわけじゃないんだけど、基本的には上から下へとプロセスが流れます。、、、というのが米国の10年以上前の営業プロセスでした。この時点でも現在の日本よりも先を走っていますよね。最近はこのプロセスをアップデートして運用しています。アップデートに欠かせないものがナーチャリング、リードナーチャリングです。
サマリー
ナーチャリング、リードナーチャリングとは何か?
下の図を見てください。

ビジターはサイト訪問者、プロスペクトは所謂リードのこと。プロスペクトが一度でも商品を契約すればバイヤーとなり、何度も購入してくれる信者をアドボケイトと定義しています。
赤字と赤線がこれまでの営業プロセス。 マーケティングファネルの各ステージを進んでいく過程でリードは減っていき、最終的には数%しかバイヤー、アドボケイトになりません。消えていった9〇%の人達をどうしていたかというと、これまでの営業プロセスでは何もしていなかったんです。余裕があればケアするくらいの程度。もったいないですよね。
そこで営業プロセスを見直そう!ってなって、青字と青線が加わったのがアップデート後のモデル。これまでの「流れて終わり」のフローではなく、フローが循環するモデルになっていますよね。つまり離脱したリード、バイヤーを再利用した方がよくない?って考え方になったんです。
リードの新規獲得って必ず頭打ちになるんです。毎月獲得したリードを計測するとわかります。どんな事業でも例外はありません。ユニークリードは有限です。じゃあ一方向の営業プロセスはいずれ詰むってこと?その通り。だから再利用なんです。どうやってやろうか?ってなった時にナーチャリングという言葉が出てきたんです。
ナーチャリングの役目はリードを育成してバイヤーに育てることが一つ(リードナーチャリング)。もう一つは離脱したリード、バイヤーに的確なコミュニケーションを取って再活性化を狙うこと(ナーチャリング)です。ナーチャリングとリードナーチャリングには若干の意味の違いがあります。この記事では的確なコミュニケーションを取って強い関係を構築する手法と捉えてもらえると助かります。
以降はどうやってそれを運用に乗せるかについてです。
マーケティングファネルを設計し直す
マーケティングファネルの各ステージは明確に計測可能であることが重要です。
- 悪い例:購入意欲小→購入意欲中→購入意欲大
- 良い例:見込客→顧客→上得意
例えばメールアドレスをもらって、まだ商品を買っていない場合は見込客、3回購入したら顧客、それ以上を上得意のように明確に定義して計測できるようにします。
各ステージ毎にナーチャリングを実行していくんですが、ステージの定義がぼやけていると、ステージ切り替えの条件が曖昧になってナーチャリングが機能しません。注意してください。
まだファネルの設計ができていない場合は以下のテンプレートが便利なんで、ダウンロードして使ってください。

ファネル設計してないの、、、?
マーケティングの全体像を設計していないのに個々のキャンペーンを走らせるのはやめてください。設計図(ファネル)を入手して今すぐ全体像を作り上げましょう。メールアドレスを入力するだけで無料で手に入ります。
リピートを前提とした設計がしづらい(わかりづらい)のがファネルの難点です。リピートを前提にしないと、正しいLTV(顧客 1人当たりの平均売上)が算出できないので、広告、コンテンツ、人員などのマーケティングコストがだせません。マーケティングファネルを作ったら、F2(初回リピート)、F3(2回目リピート)で何を売るのか?いくらで売るのか?といったオファーを定義しておくべきです。
ファネルのステージ移動をKPI(中間指標)として、ボトルネックを特定する
やるべきことと、やらない方がよいことの判断を明確にするには施策を計測できるようにしなければいけません。ボトルネックを特定するにはKPI(中間指標)を正しく設定することです。ファネルの各ステージに何人が在籍して、何人が次のステージに進むかを計測すると、どこがボトルネックかわかります。ファネルの各ステージから外れる対象外(学生とか、競合とか)も定義して分けるようにしてください。対象外はナーチャリング不要です。
フロントエンド商品(最初に売る商品)を売りやすくカスタムする
継続前提のビジネスモデル(ほとんどのビジネスがそうですが、、、)では初回契約(フロントエンド商品)がとにかく重要です。フロントエンドで満足いく体験が得られなければ、2回目の購入は期待できません。フロントエンドの質が悪いとF2に到達しないので、ほぼ全ての人をナーチャリングで引き戻す流れになります。これはあまり気が進むことではないですよね。出来ることならプラスの関係を構築するナーチャリングがしたい。だからフロントエンド商品の質を改善することは真っ先にやらないといけないことなんです。
コミュニケーションのコツ
楽○とか、〇経のメルマガは最悪。内容がつまらないというのはまだ許せるんです。それよりも一斉送信がモロバレなのが問題。世の中にある90%のメルマガはこれです。だから読者はメルマガを読まないし、事業者はメルマガが効果的じゃないと思っている。メルマガは正しく運用すればいまだに効果的なコミュニケーション(ナーチャリング)手段です。非運用者と比べると売上へのインパクトは 数倍変わってきます。
パーソナライズした内容でいかに読者を楽しませるかが、読まれるメルマガの条件です。読者を楽しませたり、安心させたり、役に立つコンテンツをプレゼントした後で少しだけオファーさせてもらう。それが丁度良いバランス。永遠の課題はパーソナライズすればするほど、手間が掛かること。どこで折り合いをつけるかが難しくなります。最低限以下のチェック項目をクリアすればそれなりの落としどころに落ち着くはずです。
- 購入完了、発送完了、といったビジネスメールは「support@xx.xx」のようにサポートのメールアドレスで送信する。ナーチャリング目的の場合は担当者名で送信する。
- 商品販売後のケア(購入に対する後悔を払拭するメール)とアンケートメールは全ての商品に対して実装する。
- 1人のペルソナに対してメールを書く。ペルソナは3~10人位作っておいて、日によってターゲットを変えること。ペルソナの作り方は[本当に役立つマーケティングペルソナの作成方法]記事を参考にどうぞ。
- 接触頻度の高いメルマガを優先して改善していく。
マーケティングオートメーション(MA)を実装する
ナーチャリングを運用に載せる方法は2つあります。
- マーケティングオートメーション(MA)の実装
- インサイドセールスやカスタマーサクセス、カスタマーサポートといった人手を雇う
マーケティングオートメーション(MA)とはナーチャリングを自動化することを言います。24時間営業のサポートをしてくれるツールとも言えます。セグメント(ファネルの各ステージをさらに細分化してグループ分けしたもの)を定義し、そのセグメントそれぞれにパーソナライズしたコミュニケーションを取っていきます。 人がそれをやるパターンもあります。その場合は上述の通り、様々な役割の人が絡むことになります。
マーケターはセグメントを定義して、セグメントに対して流すキャンペーンと発動条件を考えなければいけません。
パーソナライズとメルマガブランディング
僕はCopybloggerのメルマガを購読しています。Melyssa Griffinというフリーランスのメルマガも大好きで届くのを楽しみにしています。一方で〇天とか、WiFiレンタルサービスのメルマガとか、いつオプトインしたかわかんないメルマガは一度も開封したことがありません。読みたいと思うメルマガとムカつくメルマガの差って一体なんなんでしょうか?
読みたいと思わせる方法の1つは、パーソナライズした内容を届けることです。個人のストーリーは人を惹きつけますが、企業名で来るメルマガにそれはありません。一斉送信とわかるメールは読む気がしないし、Gmailはそれをキャンペーンフォルダに振り分けちゃいます。逆にサービスの担当者名で届き、パーソナリティ溢れる内容だとついつい読んじゃうものです。
もう一つのコツはメルマガをブランド化して、そのブランドから届くコンテンツは読むべきだと読者の脳にインプットさせることです。サイト、コンテンツ、サービスには共通のブランドロゴを使う。そのブランドロゴのイメージをプラスにするように露出していく。これを繰り返していきます。人間には元来グループに属したいと思う欲求が備わっています。その欲求を喚起するようにブランドを作っていきましょう。
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