
何かが生まれ、流行り、廃れるというプロセスは万物共通です。ビジネス、株、マネー、不動産、資源、、、。
意外と知られていない事実として、革新的なアイデアから生まれた商品は大ヒットとはならないという法則があります。どんなに良い商品でも生み出した直後の価値を消費者は理解できません。何かが生まれる時と、何かが流行る時とでは、時差があります。なぜでしょう。これには人間が持つ心理が関係しています。人間の本能はグループに属したいと思うようにプログラムされています。
グループへの帰属欲求はみんなと同じものが欲しいと思う欲求です。これとは対照的な心理で、みんなが持っていない高価な物を欲するという欲求もあります。他人より抜きに出たいという元来備わった欲求です。人間はこの2つのうちのどちらかが働いて、購入行動(消耗品のような欲求の動かない買い物は除きます)を取ります。
この2つの欲求は、グループに溶け込みたいか、抜きに出たいかの違いだけ。どちらもグループを意識しています。グループがどのように生まれ、増殖するかの過程が流行にあたります。
とある商品をリリースしたとします。商品をポンっと市場に投げ入れられて、まず少数の人が群がってきます。その瞬間が最初のグループの誕生です。しばらくすると同じような属性の人たちが続々とグループに入ってきます。流行が生まれ、大ヒット商品となった瞬間です。
繰り返しになりますが、グループを形成するのは時差なんです。生まれてからの時差。この時差の間にその商品の認知が進み、欲求にアピールすることができれば、大きなグループが生まれます。
革新的なアイデアから生まれた商品は、何でも先にやりたがる流行に敏感な人を集めます。その後、認知が上手く進むと、一定のところでブレークポイントを迎え、多数の人がその商品に飛びつきます。つまりこう結論付けられます。
「大ヒットとは、既存のアイデアの再認知によって大きいグループが形成されること」
意外だと思いませんか?
サマリー
Appleは二番煎じが上手い企業
Appleのこれまでのプロダクトを分析するとおもしろいことがわかります。それは革新的なプロダクトを生み出す企業ではなく、既存の商品カテゴリーをブラッシュアッブするのが上手い企業だということ。

例えば、iPod。
mp3プレイヤーというフロンティアを踏んだのは、韓国サムスン系の企業でした。その商品「mpman」が日本の市場に登場したのは1998年頃です。続いてSONYも「メモリースティック」で市場に参入します。が、ブレークポイントが来ません。そして2001年にmp3プレイヤー市場は大きな転機を迎えます。
iPodの登場です。iPodは爆発的なベストセラーとなります。
ポイントはどこにあったのでしょう。まず容量の大きさ。それまでは自分のコレクションのなかでお気に入りの一部を持ち歩くのがmp3プレイヤーの位置付けでした。しかし大容量にし、全ての曲を持ち歩けるようにしたのです。それからデザイン。iPodを持ち歩くのが一種のステータスとなり、ファッションアイテムの一部と見られるようになりました。
Sonyはいつだって革新的だった
先手を打っていたSONY。これは何もmp3プレイヤーに限った話ではありません。様々なプロダクトでこの戦略を取っています。米国で毎年1月に開催される展示会(CES)では世界的にSONYの最先端プロダクトは注目されており、彼らのブースは渋谷のスクランブル交差点状態です。
では彼らは企業として上手くいっているのでしょうか?、、、ご存知の通りですね。でもなぜでしょう?それだけ注目されているというのに、なぜ人はSonyの製品を買わないのでしょう?
答えは先進的だからです。
ベストセラーは認知という大きいバルーンが割れることで起こる
ブロダクトライフサイクルとは、その商品カテゴリーが生まれて、死ぬまでのサイクル。この概念は冒頭で説明しましたね。

このチャートの縦軸は商品カテゴリーが属する市場規模。横軸は時間です。経過時間毎にどのくらいの取引量があるかがわかります。

URL:http://www.quickmba.com/marketing/product/lifecycle/
まず導入期です。商品カテゴリーが新たに生まれます。マーケターが市場に気付き、リサーチを開始します。小回りの利く企業や起業家は「発明品」と呼ばれるプロダクトをリリースします。消費者がプロダクトの価値を認知していないので、市場規模はほとんどありません。一部のトレンドに敏感な層(アーリーアダプター)がプロダクトを買う程度です。

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続いて成長期。商品の技術革新(低コスト化や高品質化)により、一般層にもプロダクトが受け入れられるようになります。インフルエンサーは、商品をSNSで広めます。メディアにも取り上げられ、一気にユーザグループが築かれます。もしもその商品カテゴリーが市場に受け入れられなければ、このフェーズはありません。

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そして成熟期。参入企業が増え、商品価格が下落します。

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最期に衰退期。商品が広く行き渡り、充足した状態。市場は飽和状態になり、消費者の需要の低下、市場の縮小が始まります。
この一連のプロセスは風船に空気を入れることを考えるとわかりやすいです。風船は市場。その中に認知という空気を入れていきます。とある一定量まで空気をいれると、風船がピンと張り、空気を入れやすくなります(成長期)。一定以上に到達すると、今度は空気が抜けやすくなります。空気を入れて、口を離した瞬間に飛んでいってしまうかの如く、抜けていきます(成熟期)。空気が風船の許容量を超えると割れます(衰退期)。
Appleのプロダクトが大ヒットするのは成長期を狙って参入するからです。優れたデザインや優れたUX(ユーザがそのブロダクトを通して、得る体験を設計すること)を、持つプロダクトで一気にその商品カテゴリーを駆逐します。
ベストセラー作家への道筋が薄っすらと浮かび上がってきましたね。まとめていきましょう。4つのチェックポイントを提示します。それは必ず通過しなければいけません。
チェックポイント①市場が存在するか?

新たな市場を生むのではなく、既存のおいしそうな市場の発掘が絶対要件です。特に導入期を終えようとしている市場が狙い目です。方法は簡単。出版物のトレンドを見ればいいんです。Amazonや書店を見てみましょう。どんな本に消費者が集まり、どんな情報を見ているのかがわかれば、市場のニーズがわかってきます。
チェックポイント②欲求を喚起できるか?
欲求を喚起する商品は売りやすいです。消耗品のような必要に迫られて購入に至るタイプの商品は価格勝負になりがちですが、欲求で購入する商品は価格に関係なく、欲求を動かせられれば売れます。例を挙げましょう。例えば、犯罪が多発する世の中になり、ビジネスとして市場が大きくなったとします。バッドケースは防犯アラーム。これは欲求を換気するのは難しいです。なぜなら将来、泥棒に入られることなど、人は想像しないからです。一方、良い例は護身術。これは自分自身に投資する結果として、防犯につながるという商品。自分自身に投資することで自分が今よりも強くなるという欲求を喚起しています。
チェックポイント③アジャイルで商品を作っているか?
ソフトウェア開発のほとんどは時間をかけて要件を洗い出し、完璧に設計してから、始めてプログラミング作業に移ります。コレ、ウォーターフォール方式と言って、手戻りを最小限に抑えるやり方です。そんな中、アジャイルという方式で開発する企業が増えてきました。アジャイルとは俊敏という意味。顧客のフィードバックは商品を売れるようにするエネルギー源。フィードバックを反映した商品にすれば、大ヒットは間違いありません。しかし、ウォーターフォールで開発している商品にフィードバックを含める余地はありません。そこでアジャイルを使って、製品を細かい単位で作り、リリース→フィードバック→フィードバックを反映して再リリース。これを繰り返します。出来る限り汎用的に作っておき、良質なレスポンスを含める余地を残しておきます。そうすることでお客さんが欲しくて堪らない商品が自然と出来上がります。
チェックポイント④ クオリティよりもスピードを重視できているか?
アジャイルで作る1単位を高速で作れれば成功は間違いなしです。商品の体を成す最低限のパッケージを作り上げます。出来たらさっさと市場に投入し、反応を見る。やることはこれだけです。口で言うのは簡単ですがやってみると難しいです。これに役立つスキルがあります。プロジェクトマネジメントです。プロジェクトマネジメントを学ぶことでクオリティを求めすぎて、商品開発に時間を掛けてしまうようなミスがなくなります。

URL:https://www.pmi-japan.org/
プロダクトとは、見込客が持つ問題を解決し、今よりもより良く生活するためのものです。これは、どんな商品やサービスにも共通します。見込客の問題を解決するには見込客に正しいやり方を聞くのがベストです。ベストセラーの作り方はこれを重視しています。とても合理的だと思いませんか?仮に全く反応が得られない商品を作ってしまったのであれば、それは市場がなかったのです。くじ引きでハズレを引いたと思って、さっさと切り替えて、またすぐにスタートを切りましょう。
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